沖縄の企業が外国人を雇うとき:技人国と特定技能の違いと手続きの流れ
「人手が足りないので外国人を採用したい」「留学生を正社員として雇いたい」——沖縄県内でも、こうしたご相談が年々増えています。沖縄労働局によると、県内で働く外国人は2025年10月末時点で20,354人(前年比18.1%増)、外国人を雇用する事業所は3,697か所と、いずれも過去最多を更新しました。産業別では宿泊業・飲食サービス業が最も多く、全体の約4分の1を占めています。
外国人を採用するとき、最初に確認すべきなのが「どの在留資格で働いてもらうのか」です。企業の採用で特によく使われるのが、技術・人文知識・国際業務(通称「技人国(ぎじんこく)」)と特定技能の2つ。このコラムでは、両者の違いと、実際に採用するまでの手続きの流れを、沖縄の申請取次行政書士が出入国在留管理庁(入管)の資料をもとに解説します。
※本記事は2026年9月25日時点で公表されている情報にもとづいています。制度は改正が続いているため、記事末尾の出典(出入国在留管理庁ほか)もあわせてご確認ください。
まず結論:在留資格は「仕事内容」で決まる
在留資格は、会社が自由に選べるものではありません。採用した外国人に「どんな仕事をしてもらうか」によって、使える在留資格が決まります。
- 技人国:大学や専門学校で学んだ知識を使う、いわゆるホワイトカラーの仕事(通訳・翻訳、企画・マーケティング、海外営業、エンジニア、デザイナー、経理など)
- 特定技能:人手不足が深刻な特定の分野での現場の仕事(外食業、宿泊、介護、建設、農業、飲食料品製造業、ビルクリーニングなど)
たとえば同じホテルでも、海外向けの企画・広報や外国人客対応の通訳を担当してもらうなら技人国、フロント・接客・レストランサービスなど宿泊の現場業務全般を担当してもらうなら特定技能「宿泊」が候補になります。まずは下の図で、おおまかな方向性を確認してみてください。

なお、永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者の在留資格を持つ方は、仕事内容の制限がありません。在留カードで在留資格と「就労制限の有無」を確認しましょう。
技人国と特定技能の違い(比較表)
| 項目 | 技術・人文知識・国際業務(技人国) | 特定技能1号 |
|---|---|---|
| 主な仕事 | 専門知識を使う業務(通訳・翻訳、企画、営業、技術者など) | 特定の19分野の現場業務(外食業、宿泊、介護、建設、農業など) |
| 本人の要件 | 業務に関連する大学・専門学校の卒業、または一定の実務経験 | 分野ごとの技能試験と日本語試験に合格(技能実習2号を良好に修了した人は原則免除) |
| 日本語 | 一律の試験要件はなし。ただし対人業務では日本語能力の資料が必要な場合あり(2026年4月〜) | 日本語試験(JFT-Basic・日本語能力試験N4以上など)。分野により上乗せあり |
| 現場作業 | 不可(研修の一環として一時的に行う場合などを除く) | その分野の業務であれば可 |
| 在留期間 | 5年・3年・1年・3か月(更新回数の上限なし) | 1回の許可は最長3年、通算で原則5年まで |
| 家族の帯同 | 可(家族滞在) | 原則不可 |
| 会社の支援義務 | なし | あり(登録支援機関への委託も可) |
| 会社の主な届出等 | ハローワークへの外国人雇用状況の届出など | 左記に加えて、分野別協議会への加入、入管への定期届出(年1回)・随時届出 |
| 雇用形態 | 直接雇用のほか派遣も可 | 原則直接雇用(派遣は農業・漁業のみ) |
| 報酬 | 日本人が従事する場合と同等額以上 | 日本人が従事する場合と同等額以上 |
ひとことで言えば、技人国は「学歴・専門性」を、特定技能は「試験で確認された技能」をもとに働く在留資格です。特定技能は現場の仕事ができる一方で、会社側に支援や届出の義務が多く課されている点が大きな違いです。
技術・人文知識・国際業務(技人国)のポイント
学歴と仕事内容の関連性が審査される
技人国では、本人の学歴(専攻)や職歴と、会社で担当する業務との関連性が審査されます。大学(短大を含む)を卒業している場合は比較的幅広く認められる一方、日本の専門学校(専門士)の卒業者は、専攻した内容と業務内容の関連性がより厳しく見られます。学歴がない場合は、原則として技術・人文知識の分野で10年以上、国際業務(翻訳・通訳・語学指導など)で3年以上の実務経験が必要です。
「現場の仕事」が中心だと許可されない
飲食店のホールや調理補助、工場のライン作業、ホテルの客室清掃など、学術的な知識を必要としない業務が中心の場合、技人国は許可されません。入社後の研修として一時的に現場を経験することは、研修計画の内容によって認められる場合がありますが、「実態は現場要員」と判断されると不許可や、更新時のトラブルにつながります。職務内容を具体的に説明できるかどうかが審査のカギです。
2026年4月から:対人業務には日本語能力の資料が必要に
2026年4月15日、入管は技人国のガイドライン(「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について)を改定しました。カテゴリー3・4の企業(上場企業や、前年の源泉徴収税額が1,000万円以上の企業などに当たらない、多くの中小企業)で、通訳・翻訳・接客・営業など言語能力を使う対人業務に主に従事する場合は、CEFR B2相当の言語能力を示す資料(日本語能力試験N2以上、BJTビジネス日本語能力テスト400点以上、日本の大学卒業など)の提出が求められるようになりました。沖縄の中小企業が採用する場合は、特に注意が必要です。
給与は「日本人と同等以上」
外国人であることを理由に、同じ仕事をする日本人より低い給与にすることはできません。社内の給与規程や、同じ職種の日本人社員の給与水準と比べて説明できるようにしておきましょう。
特定技能のポイント
対象は19分野。沖縄では外食業・宿泊・介護・建設・農業など
特定技能で働けるのは、国が定めた「特定産業分野」に限られます。現在の分野は、介護、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、自動車運送業、鉄道、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、林業、木材産業の16分野に、2026年に追加されたリネンサプライ、物流倉庫、資源循環を加えた19分野です。新しい分野は試験の実施状況などによって受入れを始められる時期が異なるため、最新の状況を確認しておく必要があります。
沖縄県内では特定技能で働く人が3,935人(2025年10月末)に達しており、観光を支える外食業・宿泊のほか、介護、建設、農業、飲食料品製造業などで受入れが進んでいます。
本人の要件:技能試験と日本語試験
特定技能1号で働くには、原則として分野ごとの技能試験と日本語試験(国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)または日本語能力試験N4以上など)の両方に合格する必要があります。関連する職種・作業で技能実習2号を良好に修了した方は、これらの試験が免除されます。
受入れ企業の義務:協議会・支援・届出
- 分野別協議会への加入:初めて特定技能外国人を受け入れる場合は、在留資格の申請前に、分野ごとの協議会に加入しておく必要があります。
- 支援計画の作成と実施:入国前の事前ガイダンス、空港への送迎、住居の確保の支援、生活オリエンテーション、日本語学習の機会の提供、相談・苦情への対応、定期的な面談などの「義務的支援」を行います。自社で行うのが難しい場合は、登録支援機関に全部を委託できます。
- 入管への届出:雇用契約の変更・終了などがあったときの随時届出に加え、受入れ・活動・支援の状況を報告する定期届出があります。定期届出は2026年4月から年1回(毎年4月1日〜5月31日)になりました。
- 2027年4月からの支援体制の見直し:自社で支援を行う場合の体制要件(支援責任者の講習受講など)が改正される予定です。これから自社支援を考えている企業は、あらかじめ確認しておきましょう。
1号と2号の違い
特定技能には1号と2号があります。特定技能2号は、より熟練した技能を試験などで証明した人が対象で、在留期間の更新に上限がなく、配偶者や子どもの帯同も認められます。会社の支援義務もありません。長く働いてもらいたい人材には、2号へのステップアップを見据えた育成計画を立てておくと安心です(介護分野には2号がなく、介護福祉士の資格を取って在留資格「介護」へ移る道があります)。
採用までの手続きの流れ
手続きは、海外から呼び寄せる場合と、すでに日本に住んでいる外国人を採用する場合とで大きく異なります。
海外から呼び寄せる場合(在留資格認定証明書)

- 雇用契約の締結:在留資格が許可されることを条件に、雇用契約を結びます。仕事内容・給与・労働時間は、申請内容と一致させることが大切です。
- (特定技能のみ)受入れ準備:協議会への加入、支援計画の作成(または登録支援機関との委託契約)、事前ガイダンス、健康診断などを行います。国によっては、送出し国側で別途の手続きが必要です。
- 在留資格認定証明書交付申請:会社の所在地を管轄する入管(沖縄県は那覇支局)に申請します。会社の職員や申請取次行政書士が代理で申請でき、この申請自体に手数料はかかりません。
- 審査・交付:審査期間は1〜3か月程度が目安です。証明書は電子メールで受け取ることもでき、本人に転送して使えます。
- 査証(ビザ)申請:本人が現地の日本大使館・総領事館で査証を申請します。認定証明書の有効期間は交付から3か月なので、それまでに入国できるよう日程を組みましょう。
- 入国・住居地の届出:主要な空港では入国時に在留カードが交付されます(それ以外の空港では、住居地の届出後に郵送)。住居が決まったら14日以内に市町村役場で住居地の届出をします。
- 就労開始・ハローワークへの届出:外国人を雇い入れたときは、ハローワークへ外国人雇用状況の届出が必要です(雇用保険に加入する場合は資格取得届で届け出ます)。
日本に住んでいる外国人を採用する場合(在留資格変更など)
- 留学生を新卒採用する:「留学」から「技術・人文知識・国際業務」などへの在留資格変更許可申請が必要です。4月入社の場合、入管は12月1日〜1月31日の間の申請を呼びかけています(1〜3月は申請が集中するため)。卒業できなければ許可されないため、卒業見込みの確認も欠かせません。
- 技能実習を修了した人を特定技能で雇う:「技能実習」から「特定技能1号」への在留資格変更許可申請を行います。
- ほかの会社で働いている人を中途採用する:技人国の方が同じ在留資格の範囲内の仕事に転職する場合、変更申請は不要ですが、「就労資格証明書」を取得しておくと、次回の更新が安心です。本人は14日以内に入管へ所属機関の変更を届け出ます。一方、特定技能は会社ごとに許可されるため、転職の際には在留資格変更許可申請が必要です。
なお、2026年10月1日から、在留資格の変更・更新の手数料は、許可される在留期間に応じて窓口申請で10,000円〜75,000円に改定されます。詳しくは「【2026年10月1日施行】在留手続の手数料が改定」をご覧ください。
沖縄の企業が気をつけたい4つのポイント
- 在留資格の範囲外の仕事をさせない:技人国で採用した社員を、繁忙期だからといって客室清掃やホール業務に常時回すと、資格外の就労と判断されるおそれがあります。本人の在留資格だけでなく、雇った会社も「不法就労助長罪」で処罰の対象になり得ます。
- 採用前に在留カードを確認する:在留資格・在留期間・就労制限の有無を必ず確認し、コピーを保管しておきましょう。留学生のアルバイトは「資格外活動許可」があっても原則週28時間までです。
- 住まいと生活の準備:特定技能では住居確保の支援が義務です。技人国でも、社宅や保証人の問題で入社が遅れることがあるため、早めに準備しておくと安心です。
- 制度改正の予定を押さえる:技能実習制度は、2027年4月から新しい「育成就労」制度に移行する予定です。長期的な人材確保を考える企業は、特定技能との組み合わせも含めて計画を立てておきましょう。
沖縄県での申請先
沖縄県内の企業・外国人の在留手続は、福岡出入国在留管理局 那覇支局(那覇市樋川1-15-15 那覇第一地方合同庁舎/窓口受付 平日9:00〜16:00)が管轄しています。宮古島出張所(宮古島市・宮古郡)、石垣港出張所(石垣市・八重山郡)、嘉手納出張所もありますが、取り扱う手続は窓口によって異なるため、事前に確認してから出向くと安心です。
まとめ:採用の「前」に在留資格を確認しましょう
外国人採用でいちばん多い失敗は、「採用を決めてから、その仕事では在留資格が取れないとわかった」というケースです。任せたい仕事内容 → 使える在留資格 → 本人の学歴・試験・日本語 → 会社側の準備の順に、採用活動の前の段階で確認しておくことが、スムーズな受入れへの近道です。
行政書士事務所Naviは、沖縄県内の企業の皆さまの外国人採用をサポートしています。代表の行政書士は出入国在留管理局に届出済みの申請取次行政書士で、職務内容の整理や書類の作成から入管への申請までを代行できます。宮古島・石垣島などの離島の企業さまも、メール・郵送・オンラインでご対応可能です。日本語・韓国語でご相談いただけます。費用は料金表をご覧のうえ、「この仕事内容で技人国は取れる?」「特定技能と技人国のどちらがよい?」といったご質問も、お気軽にお問い合わせください(TEL 070-8476-8255)。
出典・参考資料
- 出入国在留管理庁「在留資格「技術・人文知識・国際業務」」
- 出入国在留管理庁「「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について」(令和8年4月15日改定)
- 出入国在留管理庁「特定技能制度」
- 出入国在留管理庁「特定技能 分野別の情報」
- 出入国在留管理庁「在留資格「留学」から就労資格への変更申請を予定されている皆様へ」
- 出入国在留管理庁「1号特定技能外国人への支援体制に係る要件の改正について(令和9年4月1日施行)」
- 出入国在留管理庁「令和8年10月1日付け在留許可手数料の額の改定等について」
- 沖縄労働局「沖縄の外国人雇用状況の届出状況(令和7年10月末現在)」(PDF)



